2016年08月03日

花を手渡しながら

「この子はどうやって袋を開けてしまうのかしらね」彼女は小袋の結びひもを子細に調べながら、なかば自分自身に問いかけるように言った中藥脫髮
 ガリオンとアダーラは馬に乗って〈砦〉から出ると、うねり重なる丘を西に向かって走り出した。空はどこまでも青く澄みわたり、太陽はまばゆく輝いていた。朝の大気は身が引き締まるほど冷たかったが、ここ一週間ほどの寒さではなかった。ひづめの
下の草は茶色に枯れ、冬の空のもとで深い眠りに入っていた。かれらは一時間あまりたがいに口をきかずに馬を走らせていたが、日当たりのよい南側の斜面の、風のこない場所に馬を止めた。二人はどこまでも続くアルガリアの平原をじっと見守った。
「ガリオン、魔法でどんなことができるの」アダーラは長い沈黙の末、口を開いた。
 かれは肩をすくめた。「それは術をかける人間によって違ってくるね。ある者は何でもできるかと思えば、ある者はほとんど何にもできない場合もあるし」
「あなたは――」と言いかけて彼女はためらった。「この枯れ草に花を咲かせられるかしら」その言い方はあまりに早口だったので、ガリオンはそれが彼女が本当に聞きたかった質問ではないことを悟った。「今すぐによ。こっただ中でよ」
 ガリオンは枯れたハリエニシダのいじけた茂みを眺め、そのために行なわねばならない一連の手順を思い浮かべていた。「たぶんできると思うよ」かれは答えた。「だけどそんなことを季節はずれの時期にしたら、この植物は寒さに抵抗する力もなく枯れ死んでしまうだろう冷氣機推介
「でもこれはただの雑草なのよ、ガリオン」
「何でわざわざ殺さなきゃならない?」
 彼女はガリオンの目を避けた。「それじゃ、わたしのために何かやってみせてくれない?」アダーラは言った。「ほんの少しでいいのよ。今のわたしには何でもいいから信じるものが必要なのよ」
「わかった、やってみるよ」ガリオンはなぜ少女が急に沈みこんだのかわからなかった。「それじゃ、こんなのはどうだい」かれは小枝を拾いあげると手の上でひっくり返し、入念にそれを見つめた。次にひと握りの枯れた草でそれを包むと、さらにしげしげと観察して、何をしたいかを心の中で思い定めた。ガリオンは〈意志〉を一気に放出せずに、少しずつ出していったので、変化もゆっくりしたものになった。小枝を包んだみじめな枯れ草がしだいに変わっていくのをアダーラは目を丸くして見守った。
 それは花と呼べるほどのものではなかった。薄紫に近い色の花をつけたそれは見るからにかしいでいた。花は小さく、花弁もきちんとついていなかった。だがその香りはかぐわしく、輝かしい夏を約束していた。ガリオンは黙っていとこに、不思議な感情を味わっていた。かれが術を使うたびにともなう音はいつものように騒がしいものでなく、むしろ光輝く洞穴で子馬を生きかえらせたときの鐘の音によく似ていた。そしてかれが〈意志〉を集中して生み出した力は一切まわりから引き出したものではなかった。それらはすべてかれの内より出たものであり、ガリオンはそのことに深い独特の喜びを味わっていた。
「まあ、かわいらしい」アダーラは小さな花を両手で受け取り、そのかぐわしい香を味わった。その拍子に長いこげ茶色の髪が前に垂れ、彼女の顔を見えなくした。再び顔をあげたアダーラの瞳には涙が浮かんでいた。「これなら大丈夫だわ」彼女は言った。「しばらくはわたしの心を慰めてくれるでしょう」
「どうかしたのかい」
 アダーラは答えず、茶色に枯れた大平原をじっと見おろした。「セ?ネドラって誰なの」だしぬけに彼女は聞いた。「他の人たちが話してるのを聞いたことがあるわ」
「セ?ネドラだって? 彼女はある帝国のお姫さまさ。トルネドラのラン?ボルーンの娘なんだ冷氣機價格比較
「どんな人かしら」  


Posted by enexcsay at 18:44Comments(0)